建築業界の職業・資格


建設業とは

建設業は、ダムや道路、橋、トンネルといった構造物、電気・ガス・上水道・通信などのライフラインをつくる「土木」、高層ビルなどの巨大建築物からマンション、戸建て住宅までの建物全般をつくる「建築」の2つに大分されます。
日本国内の数ある産業の中でも就業人口の1割弱を占める、製造業や卸売・小売業などと並ぶ基幹産業のひとつです。この建設業に関わる業界は「建設業界」と呼ばれ、市場規模では自動車産業に次ぐ、国内2位の大きさです。

建設業とは、元請や下請の別に関わりなく、建設工事の完成を請け負う仕事のことをいいます。この「請け負う」とは、当事者の一方が、ある仕事を完成することを約束し、相手方がその仕事の結果に対して報酬を与えることを約束する契約のことです。すなわち建設業は、土木工事、建築工事、設備工事などを契約に基づいて完成させる仕事となります。

建築物の設計から竣工(建物の完成)までには、さまざまな立場の人たちが関わります。一般的な関係性は下図の通りです。建設業の営業に際しては、国や都道府県の許可が必要で、許可は工種ごとに分かれています。土木・建築などの一式工事から土工・左官などの専門工事まで29業種に分かれており、一式工事の許可を得たものを総合建設業、工種許可にとどまるものを専門工事業者として区分しています。

なお、建設会社を「ゼネコン」と呼称しますが、これはゼネラルコントラクターの略で、直訳すると総合請負業ですが、国内では総合建設業を意味するのが一般的です。

建設業界の職種

代表的なものでは、建築士、CADオペレーター、インテリアコーディネーターなどがあります。

■ 建築士
建築物の設計と工事監理を担います。国家資格であり、業務独占資格の一種で、一定規模の建築物の設計や工事監理は、資格者でないと行うことができません。
施主の意向を反映させるように図面を作成する設計は、建築基準法に基づき、安全性や耐震性も考慮する必要がある仕事です。施主と打ち合わせを重ね、依頼内容と法的条件のいずれも満たす図面を仕上げていきます。図面完成後、実際の工事に着手し、現場で作業を監督・指揮し、設計図通りに工事が行われているかを確認します。

■ CADオペレーター
専用のCADソフトを用いて、図面・設計図・完成予想図等を作成する仕事です。設計士やデザイナーからの指示を受けて、建物や機械などの図面の作成・修正・調整などを実施します。

■ インテリアデザイナー
室内空間の設計や演出を考案し、魅力的な空間へと仕上げる職業です。「室内環境のデザインや設計」と「インテリア用品のデザイン・設計」の主に2つに業務がわけられます。

■ エクステリアデザイナー
塀、庭、玄関、アプローチ、駐車場、フェンスなど、建物の外観のデザインのデザイン・設計を行う職業です。依頼主の要望を受けて現地を調査し、日当たり、構造物の有無、地盤の状態などを確認し外観のデザインを設計し、施工に必要な工程や資材などを指定します。

■ 建築施工管理技士
建築現場の工程や施工、安全、コストなどを管理し、施工を滞りなく進行するのが主な仕事です。国家資格であり、特定建設業および一般建設業の許可を得る際に、営業所や建設工事への配置が義務付けられている職種です。

■ 大工
木造建築の建築や増改築、修理を行うことが主な仕事です。建築現場で、建築資材の加工、組立、取り付けを行います。鉄骨造・鉄筋コンクリート造の建物であっても、内部に木材が使われていれば、大工が加工・組立・取付を実施します。

■ 左官
壁の塗付け施工をする職人です。鏝(こて)やはけ、ローラーなどの専用道具を用いて、壁面にセメント・モルタル・土などを塗布していきます。床・壁の下地塗りだけでなく、水回り系などのタイル貼りも左官職人が担います。

■ とび(鳶)工
足場の組立・解体、鉄骨の建て方、PC(プレストレストコンクリート)の取り付けなどの作業を専門とする仕事です。高所を華麗に動きまわることから技能者は「現場の華」とも称されます。

■ 土工
掘削、埋め戻し、盛り土、コンクリート打設などの作業を担当する仕事です。土工事、コンクリート工事などを担当します。

■ 電気工事士
ありとあらゆる建築物の電気設備の設置工事や管理、メンテナンスが主な仕事です。国家資格であり、第1種電気工事士と第2種電気工事士に区別されます。
第2種は一般住宅や商店など小規模店舗・事業所など、第1種はさらにビル・工場などの電気工事に従事できます。

■ 土木施工管理技士
土木工事(ダム、河川、トンネル、道路、下水道、橋、鉄道等など)の施工管理を行います。国家資格であり、建築施工管理技士同様に、特定建設業および一般建設業の許可を得る際に、営業所や建設工事への配置が義務付けられている職種です。

■ 測量士
道路や会社、家などを建てる前に土地を計測する仕事です。土地の距離、角度、高低差などを計測し、地形図をつくります。また、災害時には測量技術から迅速に状況調査を行い、復旧のためのデータを揃えたり、災害に備えてハザードマップ作成するなどの業務も行います。

■ 建設コンサルタント
公共施設や土木施設といった社会インフラ関連の計画・設計や、その建設工事の施工監理や建設後の維持点検などの土木技術サービスを提供する職業です。

建設業の資格

建設業界ではかねてより「技術者不足」が大きな課題となっています。ここでいう技術者とは、建設系の国家資格を持つ人(有資格者)のことであり、この課題に対して国は、働き方改革などの労働環境の改善、定着率の向上を推進する一方で、若手技術者の採用や育成の促進につなげるべく、建築士法、建設業法の改正により、試験制度の改定を実施するなど、有資格者を増やす取り組みが行われています。

主な建設系国家資格

■ 一級建築士
建物の用途、延べ面積、高さ、軒の高さ、階数について、制約を受けることなく、すべての建築物の設計・工事監理を行うことができます。
建築物の大規模化、多様化、高度化により、建築技術者の職務は質・量ともに拡大し、その役割と責任はますます重くなっています。大型建築物の設計・工事監理に関する業務独占資格者である1級建築士は、「建築のスペシャリスト」として、設計はもちろん、発注、契約、審査、施工、監理等、建築物完成までの様々な場面で活躍しています。建設業界のオールラウンド・プレイヤーとして、その需要は一層高まっています。

■ 二級建築士
扱える建物には、規模や、用途、構造等に制限がありますが、個人住宅程度の規模であれば、木造、鉄筋コンクリート造、鉄骨造の設計をすることが可能です。
設計や工事監理のプロフェッショナルとしての需要はもちろんのこと、近年、さらに深刻化を増す技術者不足問題などの社会的背景もあり、様々な業種でニーズの高い資格です。また、近年のリフォーム市場の拡大などもあり、活躍の場がさらに広がっています。工業高校生なら、指定科目を修めて卒業すれば、受験資格が得られます。

■ 建築設備士
建築設備全般に関する知識および技能を有し、建築士に対して、高度化・複雑化した建築設備の設計・工事監理に関する適切なアドバイスを行います。建築士法が改正され、ますます需要が高まっている資格です。

■ 構造設計一級建築士
一定規模以上の建築物の構造設計については、「構造設計1級建築士」が自ら設計を行うか、法適合確認を行うことが義務づけられています。1級建築士の上位に位置するスペシャリストの証であり、構造の世界でのキャリアアップをめざす方は、ぜひとも手に入れておきたい資格です。

■ 設備設計一級建築士
高度な専門能力を必要とする一定規模以上の建築物の設備設計に関して、「設備設計1級建築士」が自ら設計するか、法適合確認を行うことが義務づけられています。設備設計の業務を行う上で、スペシャリストとして活躍するならば、必要不可欠な価値の高い資格です。

■ 1級・2級建築施工管理技士
取得すれば、建築施工の現場管理をする際に必要とされる知識と技術力を持つ者として認定されます。この資格を取得する最大のメリットは、建設業の許可を受けるすべての業者が必ず配置しなければならない各種の「技術者」になれることです。建設業界でのキャリアアップをめざす方にとって、欠かせない資格です。

■ 1級・2級土木施工管理技士
河川、道路、橋梁などの土木工事において欠かせない資格です。土木一式工事等において、2級では「主任技術者」、1級では前者に加えて「監理技術者」になることができます。

■ 1級・2級管工事施工管理技士
空調設備工事や給排水・給湯設備工事、衛生設備工事などの工事において、他の施工管理技士同様に、主任技術者や監理技術者になることができます。専門工事業者として、工事分野の専門性を高めることにより、より幅広い活躍が期待できます。

■ 1級・2級造園施工管理技士
公園工事、緑地工事、墓苑園地造園工事、住宅団地造園工事、道路緑化(植栽)工事など、公園工事全般において、施工計画作成、現場の工程管理、品質管理など、施工に必要な技術上の管理を行うことができます。造園業界でキャリアアップをめざす方にとって、必備の資格となっています。

■ 宅地建物取引士(宅建士)
例年の受験者数が20万人以上という、国家資格の中でもナンバーワンの人気資格。宅地・建物の売買や賃貸物件の仲介といった取引の際には、欠かすことのできない資格です。年齢や学歴などに関係なく、誰でも受験することができます。

■ 賃貸不動産経営管理士(賃貸管理士)
賃貸住宅管理業者登録制度により、登録業者での設置が義務づけられたことで、ニーズが高まり、受験申込者が近年増加している人気の高い資格の1つです。宅建士資格とも深く関連するため、合わせて取得・保持することによって活躍するフィールドをさらに広げることができます。

主任技術者・監理技術者って何?

建設業の許可を受けた建設業者が、請け負った工事を施工する場合、請負金額の大小、元請・下請にかかわらず、必ず工事現場に技術上の管理をつかさどる「主任技術者」を置かなければなりません(建設業法第26条 第1項)。また、発注者から直接工事を請け負う「元請」の場合、4,500万円以上(建築一式工事の場合は7,000万円以上)を下請契約して施工する場合は、主任技術者にかえて「監理技術者」を置く必要があります。主任技術者は1・2級資格取得者等であれば、また監理技術者は1級資格取得者等で、監理技術者資格者証の交付を受け、かつ、監理技術者講習を修了すれば、なることができます。